私の一日は、毎朝市場での魚の仕入れから始まる。大阪での修行から帰って約30年。ずっと続いている、私の一日の始まり。
先代の父が存命中は、毎朝二人で。会社、家族、社会の事など色んな事を話した。時には言い争いも含め、すごく貴重な時間だった。何といっても有難かったのは、冠婚葬祭にまつわる昔からの慣習、地域のしきたりについて、よく話してくれた。
一人で通うようになって、早13年の年月が経過した。今の時代の移ろいの早さや、昔からの慣習の合理化に、父ならどんな対策をするだろうか。そんな思いを巡らせながら、仕入れの行き帰り考える毎日。
先々代の祖父は、夏になると浜茶屋(海の家)を開いたり、いち早く寿司を始めたりした。先代の父も、仕出し・料亭部門から拡大し結婚式場を興こした。祖父は男兄弟の三番目で、父は婿養子だったから、それぞれ厳しい環境の中で、必死の思いで時代を生き抜いてきてくれたから、今がある。
次の時代につなぐために、あれやこれやと模索する日々。いよいよ実行あるのみ。色んなことが始まる。
始まると言えば、北陸に秋の味覚を伝える「底引き漁」が、明日から始まる。美味しいお料理を堪能して頂くために、良い食材が欠かせない。魚は勿論、野菜やお米など、さらに吟味して。時には斬新に。
そして、もう一つ。忘れてならないのは先人達が残してくれた、昔からの良いものは伝えつつ。
平成25年9月朔日 坂井 浩明