ウェディング・コンシェルジュ
八松苑では、ふたりの幸せのお手伝いをするスタッフを「ウェディング・コンシェルジュ」と呼びます。「プランナー」ではなく「コンシェルジュ」と呼ぶのは、彼らが挙式・披露宴のためだけの役割を担うわけではないからです。
結婚を決めたカップルと出会った日から挙式当日までの長い期間、コンシェルジュは縁あってふたりと共に晴れの日に向けての準備を進めることになります。自らもコンシェルジュを務める坂井浩明社長は「私たちの最大の願いは、おふたりが幸せになってくれること。夫婦として仲良く添い遂げていただけるよう願いながら、結婚式と披露宴を通しておふたりをサポートすることが大事だと考えています」と思いを語ります。八松苑のコンシェルジュが思い描くゴールは、周囲の人々に温かく見守られながら仲睦まじく暮らすおふたりの将来の姿なのです。
媒酌人(仲人)を設けないスタイルが増えている近年、両家が縁を進めていく中で、コンシェルジュは媒酌人に代わる潤滑油的な存在として結婚式や披露宴の方向性を取りまとめ、サポートする役割を求められるようになりました。
ふたりが晴れの日を迎えるまでには、それぞれのご両親へのあいさつをはじめ、両家の顔合わせ、結納などのプロセスをたどります。金銭的な問題の話し合いも生じますし、地域的な慣習に関する知識も必要になってきます。
ふたりにとってもご両親にとっても初めてのこと、知らないことが多く、こうした場合は、親御さん世代の目線で物事を見ることができるベテランのコンシェルジュの経験や知識が頼りになります。一方、若いカップルと同世代のコンシェルジュは、ふたりと価値観を共有することができ、豊かなアイデアや提案を生み出す感性を持っています。
八松苑では、ベテランと若手のコンシェルジュがペアになって一組のカップルを担当するのが特色です。「経験」と「感性」の両輪で、ふたりはもちろん、ご家族やゲストに喜んでもらえるおもてなしを手づくりしているのです。
コンシェルジュを務めて八年目を迎えた中野京子さんが大切にしているのは、ふたりの思いや希望を丁寧に引き出すことです。初めて結婚式場を訪れ、何を聞いていいかも分からないふたりの気持ちをほぐしながら、話し合いを重ねる中で晴れの日のイメージをつくり上げていきます。
11月25日に挙式・披露宴を行った朝本和裕さん・裕子さん(旧姓・下出)の場合、和裕さんが裕子さんに内緒で、歌をプレゼントするというサプライズを企画。こっそり練習を重ねる新郎を支えていた中野さんの胸に、披露宴で思いを込めて歌う和裕さんと新郎を真っすぐ見つめながら聞き入る新婦の姿が、深く心に刻まれました。
こうした印象的なシーンが、コンシェルジュの活力源となります。数々の挙式・披露宴を手がけてきた中野さんですが、「一組一組にとっては一生に一度の大事な晴れの日。その日その日が感動です」と新鮮な気持ちを失うことはありません。
スケジュール調整や余興をするゲストとのやり取り、ハプニングへの対応など、コンシェルジュは当日も大忙しで、とっさの判断をしなければならないこともしばしばです。それでも、本人や家族からの「いい結婚式になった。ありがとう」の一言で、疲れは吹き飛んでしまうそうです。
ふたりの間に産まれた赤ちゃんの顔を見たり、誕生にまつわる行事を手がけたり、カップルの兄弟の挙式・披露宴を担当するなどして、長いお付き合いが続くのも、地域に密着した八松苑のコンシェルジュならではの姿です。
「コンシェルジュは、幸せのおすそ分けをいただける素敵な仕事。体力が続く限りお手伝いしたいです」と語る中野さん。笑顔に包まれた晴れの日の背景には、ふたりの幸せを心から願う縁の下の力持ちの存在があるのです。
愛知県生まれ。家族の転勤に伴い、石川県へ移住。平成12年より八松苑でウェディング・コンシェルジュを務める。
(ファーボ2008年1月号掲載)